事例紹介

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※内容に関しては、関係者のプライバシーに配慮し、やや抽象化しています。

[個人のお客様:労働問題]

解雇無効の主張を排斥した事例
【事件の経過】
1.平成○年9月1日、A社従業員B(当時部長職)が同月末日を以て退職したい旨の届をA社に提出。A社代表取締役らが一旦遺留し、協議の結果翌年3月31日に退職することになった。
翌年3月31日、Bは退職。この時、A社は、Bのためと思い、離職票の退社理由に「自己都合」ではなく、「会社都合」と記載して渡した。
2.退職の約2年後、Bが、「自分は解雇された。その解雇は無効だ。」と言い出す。
    その後、Bは労働委員会のあっせんの申し立てをするが、A社はこれを拒否した。
Bは更に、地方裁判所に地位確認(すなわち、解雇が無効なので自分はまだA社の従業員であるという言い分)を求めた労働審判の申し立てをしたが、この労働審判事件では、Bの申し立てを棄却する決定(審判)が出された。
そこで、Bは更に、この審判に対する異議の申し立てを行い、通常訴訟に移行した。 訴訟での結論は、やはりBの請求を棄却する(A社勝訴)というものであった。
3.Bの主な主張は、①A社の退職当時の社長Cが、次の職場を紹介すると言っていたのに紹介しなかったのは、騙したものだ(騙して退職届を出させた)、②最初の退職届は平成○年9月末退職だったが、9月末の退職がなくなったことによりこの退職届は無効になった(にも関わらず、翌年3月31日に退職することを取締役会で決めたのは解雇である)などで、さらに、離職票に「会社都合」と書かれていることも付随して主張した。
これに対して、A社側は、①CはBに職場を紹介したが、採用されなかっただけであること、②3月31日の退職は、Bもその場にいた取締役会でBの事実上の了解の下に決められたものであることなどを主張していた。
 
【コメント】
1.辞表(退職届)を出して退職したのに、後日その退職届は無効だ、事実上は解雇であり、解雇無効である、という主張が出されることは珍しいことではないようです。
本件のようなケースはあまりないと思いますが、時々目にするのは、本当は解雇したいのに、無理矢理本人に辞表を書かせて辞職の形をとった場合です。会社としては、「解雇」という形をとると、解雇無効だと言われて面倒なことになると思い、このため自主的な退職の形をとりたいと思って辞表を書かせるということを考えがちのようで、その心情は理解できなくもありません。
しかし、無理に辞表を書かせると、当然本人は納得していないので争ってくる可能性が高くなりますし、無理矢理書かせたことが明らかになってしまえば、仮にその本人に問題があっても、事実上の不当な解雇として解雇無効とされてしまいます。
本人に問題があって解雇したいのであれば、多少時間や手間がかかっても、就業規則等に則り、きちんと手順を踏んで解雇した方が、本人も自覚して諦める可能性が高いですし、争われても負けることは少なく、結局は会社にとって良い結果になると思います。
2.本件でA社が労働審判、訴訟で勝てた理由の一つとして、取締役会等の議事録など、社内文書がきちんと作成され、保管されていたことが挙げられます。
特に中小の企業では、取締役会その他の会議の議事録などを作るのが面倒で、きちんと作られていないことも多いのではないかと思います。しかし、社内外から問題が起きたときには、誰がどのようにして決めたのかを明らかにしなければならない(証明しなければならない)ことが多くあります。この時に議事録などが残っていないとその証明が難しく、交渉や裁判で不利な立場に立たされることになります。
毎回議事録を作ることは大変なことは分かりますが、作っておく必要があります。(裁判等の証拠のことだけを考えれば、議事の様子を録音して保存しておくだけでも意味があると思いますが。)
3.本件では大きな問題にはなりませんでしたが、離職票に「会社都合」と書いていたことで、嫌な責められ方をしました。例え本人によかれと思ったとしても、事実と異なる内容の書類を作ると、(場合によっては刑事問題になることもありますし)問題を抱えることになりますので、そのようなことは避けなければなりません。(永田一志)

 
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